research 研究紹介

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網膜 網膜の機能的再生と抗老化

我々の研究テーマは「網膜の機能的再生と抗老化(Functional Regeneration and Anti-aging of the Retina)」です。眼の中でも特に光受容体である網膜及びその中心である黄斑の病態と老化について研究しています。網膜は神経組織であり、黄斑は視力を決める部分です。一度ダメージを受けると後遺症が残りやすく、病気や老化をできるだけ予防することが重要で、そのために必要な知識と対策を研究します。また、それでも進行してしまうと再生医療が必要です。近い将来に始まる網膜の再生医療を更に発展させて質を向上させるための研究もしています。

眼科学 小沢研究室・網膜老化 病態研究室
研究責任者
小沢洋子
メンバー
馬渕 洋、成松俊雄、左近見聡、藤間遼平、本間耕平
研究キーワード
網膜、黄斑、老化、失明、再生、予防
  • 加齢黄斑変性に対する新規治療法の開発および網膜の抗老化対策

    加齢黄斑変性(age-related macular degeneration; AMD)は50歳以上の1%以上が発症し、進行すると失明につながりうるため、高齢化社会においては社会問題となります。AMDの最大のリスクは老化による脆弱性であり、加えて長年の慢性炎症や酸化ストレスの蓄積による基盤病態が徐々に進行して発症します。現行の治療は終期に形成される新生血管に対する対症療法だけであり、最終的に後遺症を残すことも多くあります。早期や中期に発見されても根本治療はありません。そこで、AMDの基盤病態をさらに解明し、新しい治療ターゲットを定めて世界的に新しい治療法の開発につなげます。

    これまで我々の研究室では、AMDの基盤にある慢性炎症には高脂肪食によるマクロファージの病的活性化が鍵となること、その背景には脂質代謝異常が関係することを明らかにしました (Nagai, Okano, Ozawa et al. Communications Biology 2020)。ヒトにおけるAMD発症のリスク因子には、喫煙の他に高脂肪食や肥満を始めとするメタボリックシンドローム、脂質代謝に関連する遺伝子の変化などがあることからも、脂質代謝の制御は重要といえます。その一つの方法として、同論文で我々はこれまでにマウスにおいて、アンジオテンシンⅡ 1型受容体抗剤 (angiotensin II type1 receptor blocker; ARB)の継続投与による脂質代謝制御の方法を報告しました。現在はその効果のメカニズムをさらに解明すると共に、さらなる病態メカニズムと新規治療アプローチを探索しています。
    AMDを発症しない者でも、年齢と共に網膜の機能が低下することは知られています。老化と慢性炎症の関係は深く、将来的には本研究が、AMDだけでなく老化に伴う視機能低下を抑制し機能的回復させる対策につながるよう、眼の健康長寿につながるよう研究を続けています。

  • iPS細胞を用いた網膜・黄斑の機能的再生治療の開発

    網膜の中心は黄斑と呼ばれ、視細胞が密に存在して中心視力を決めます。AMD(上述)のほか、糖尿病黄斑浮腫(diabetic macular edema; DME) や糖尿病黄斑虚血(diabetic macular ischemia; DMI)および遺伝性網膜疾患(Inherited retinal disease: IRD)などでも黄斑病変は恒久的視力低下を引き起こします。これまで、マウスなどの一般的な実験動物の網膜には黄斑という構造が無いことから、研究には大きな制限がありました。しかし我々は、ヒト人工多能性幹細胞(induced-pluripotent stem cell:iPS細胞)から分化誘導した3次元構造を持つ網膜オルガノイドを用いて網膜および黄斑の研究を行っています。これまでにAMD病態にも関連しうる網膜色素上皮 (Retinal pigment epithelum;RPE)におけるミトコンドリアの役割などについて研究してきました (Homma, Okano, Ozawa et al. Redox Biology 2021)。現在は黄斑病態の解析および、将来的には黄斑移植の再生医療につながる研究を行っています。

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