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リプロダクション
着床前期胚発生や着床に必要な分子機構や子宮内環境
現在、日本では11人に1人のお子さんが、体外受精や顕微授精をはじめとする生殖補助医療(ART)によって誕生しています。生殖医療の分野は日進月歩で進展しており、日々新しい手法の開発や臨床的知見が報告されていますが、十分なエビデンスが確立されていないものも少なくありません。私たちは、臨床データの解析や分子生物学的実験を活用した基礎研究および臨床研究を通じて、新たな治療法の開発と質の高いARTを患者様に提供するためのエビデンス構築を目指しています。
- 研究責任者
- 浜谷敏生
- メンバー
- 小川誠司、藏本吾郎、小林達也、樋口香子
- 研究キーワード
- 子宮細菌叢、着床前期胚発生、着床、細胞外分泌顆粒、 間葉系幹細胞

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・女性生殖器管内における細胞外分泌小胞 (Extracellular vesicles : EVs) の役割 ・再生医療を用いた生殖医療におけるエビデンス構築
子宮内膜上皮あるいは卵管上皮より分泌されるEVsが胚発生、免疫(細菌叢)、着床などに果たす役割を研究しています。着床前期胚から分泌されるEVsについては、着床における役割、胚の質的(発生)マーカーとしての可能性なども検討しています。さらに、間葉系幹細胞から分泌されるEVsや多血小板血漿(Platelet-rich plasma: PRP) に含まれるEVsが子宮内膜や胚に与える影響を検討し、胚発生、卵管・子宮内細菌叢、着床不全などを改善するか、あるいは卵巣予備能の回復に寄与するかについて検討しています。いくつかの研究課題では、実中研や国立成育医療研究センターの先生方にお力添えいただき、共同研究を行っています。
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リプロダクション
先端技術の生殖医療への応用と社会実装
- 研究責任者
- 小林達也
- メンバー
- 樋口香子、小泉香穂梨、斎藤朱里
- 研究キーワード
- 胚培養、顯微授精、 顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、 子宮内細菌、レギュラトリーサイエンス
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顕微授精(ICSI)用自動マイクロマニピュレーター 「コウノトリ」の開発
顕微授精はARTの主要な技術であり、日本におけるARTの約半数の症例で実施されています。しかし、胚培養士の不足や医療の地域格差により、全国で均一な治療提供が難しくなりつつあります。私たちは、実中研およびニコンソリューションズと共同で、遠隔操作が可能な新型電動マイクロマニピュ レーターシステム 「コウノトリ」を開発し、臨床導入に向けた基礎研究を進めています。
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GM-CSFの着床促進作用証明のための多施設共同RCT: GSET study
胚盤胞移植の妊娠率は移植あたり30~60%であり、すべての移植胚が生児に至るわけではありません。私たちは、GM-CSFというサイトカインを用いて移植直前の胚盤胞を刺激することで、生産率が 約10%向上することを世界で初めて見出し、国際誌に報告しました。現在、この胚移植法の有効性を証明するため、多施設共同の前向き試験を開始しており、保険適用による社会実装と、日本の生殖補助医療の国際発信に取り組んでいます。
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子宮内細菌の機能解明とその応用に向けた研究
かつて子宮内は無菌と考えられていましたが、近年では子宮内の乳酸菌の割合が高いと妊娠率が向上することが報告されています。しかし、子宮内細菌が妊娠にどのような影響を与えるのか、その機序については未だ明らかになっていません。我々は、子宮内細菌叢と妊娠や婦人科疾患との関連について、企業やプライベート不妊クリニック、千葉大学と連携して研究を進めています。特に、子宮内の 乳酸菌の役割やその生理的意義を解明するとともに、乳酸菌製剤が女性生殖器に及ぼす影響を検討しています。さらに、乳酸菌以外の主要な子宮内細菌についても機能解析を行っています。